ひらやんのブツクサ独り言   ON WEB
 バックナンバー一覧メルマガ登録・解除・変更お問合せ 2004/1/14配信

あれから9年ー

 阪神淡路大震災から9年の歳月が流れました。

 当時私は自衛隊を退職してすでに10年の月日を過ごしており、予備自衛官として年に5日間の訓練に出頭するだけでした。

 あの日の朝、自宅のあるマンション全体が激しく揺れ、ベッドに寝ていた私は全く身動きできませんでした。大阪に生まれ育って30余年、今までにない激しい揺れでした。どれぐらいの時間揺れていたでしょうか。長いといえば長いし、短いといえば短い。時間の感覚は覚えていません。

 揺れがおさまって、すぐにテレビのスイッチを入れました。チャンネルは前夜まで見ていた朝日放送のはずですが、音声は出ているのに映像が出ません。ほどなくして、女性アナウンサーの「地震が発生しました。火を消してください。テーブルの下に身を隠してください」と、比較的落ち着いた口調のアナウンスが聞こえました。放送局にはこういう場合の対処マニュアルがあって、落ち着いて行動するよう視聴者に呼びかける雛形が定めてあるのです。

 しかし依然として画面には映像が出ません。きっと地震の影響で映像の回線が途切れているのでしょう。生放送中の番組は、音声のみで続けられていました。

 しばらくして映像が回復して、さきほどの女性アナウンサーが緊張した面持ちで、かなり大規模な地震が発生したことを告げていました。断片的に伝えられる情報の中には「神戸市内でマンションが倒壊している」というものがありましたが、そのときはまだ「マスコミのバカが、また大げさなことをことさらセンセーショナルに騒ぎ立てやがって」という思いがあって、本気で聞いてはいませんでした。しかし実際にはマンションの倒壊ぐらいで済まなかったのは、みなさんすでに御存知の通りです。

 当然にすぐ自衛隊が出動するものと思っていました。地元の第36普通科連隊をはじめ、伊丹、千僧、姫路に駐屯する部隊が総動員されるだろうと思っていたのですが、夜が明けて明るくなっても自衛隊が出動したという報道がありません。姫路の第3特科連隊から兵庫県庁に対し再三にわたって出動を打診し、知事には結局事後承諾で部隊が動き出したのが午前10時。地震発生から4時間以上も経過していました。

 自衛隊側もそれまで指をくわえて命令を待っていたわけではありません。まず伊丹駐屯地の36連隊は、連隊長の判断で、阪急伊丹駅の倒壊現場に1個小隊を出しています。中部方面隊では隷下の各部隊に非常呼集をかけて、やがて来るであろう出動要請に備えました。大阪府八尾市に駐屯する航空隊では、訓練飛行の名目でヘリを飛ばし、被災地の偵察を行なっています。

 兵庫県内にある駐屯地でも隊舎に少なからず被害を受け、千僧駐屯地では一時期、隊員たちは営庭で天幕生活を強いられたほどです。

 自衛隊は独自の判断ででき得る全ての手段を尽くしていました。にもかかわらずマスコミは当初、出動の遅れの責任を自衛隊に求めるような報道を展開しました。が、それも初めの一時的な現象で、自衛隊側に非のないことが明らかになるにつれて、感情的な自衛隊バッシングは鳴りを潜めて行きました。ただ1局を除いては――。

 自衛隊嫌いの左翼ニュースキャスター・Kは、現場からあがってくる情報を意図的に歪曲して、自分の番組の中で最後まで自衛隊叩きに奮闘したのでした。

 しかし現場で真実を知っている人たちまで騙すことはできません。兵庫県は比較的自衛隊感情がよくありませんでしたが、震災での救援活動以降はおおむね友好的な意識にかわり、自衛官を志す若者も増えたといいます。
 
 いまイラク派遣をめぐって報道合戦が繰り広げられています。どのメディアも、はじめに反対ありき。なぜ反対するのか。対案はあるのかといったことを無視して、とにかく自衛隊が行くことに反対するだけ。現場の自衛官たちも、本音では嫌がっているかのような報道が連日繰り返されています。

 現実はというと、派遣要員には希望調査が行なわれ、どうしても行きたくない、あるいは国外へ出られない事情のある隊員まで無理やり引っ張って行くことはありません。しかも、派遣を予定されていない部隊からも「俺も連れて行ってくれ」という希望が殺到していることは、どのメディアも報じていないのです。派遣要員を選ぶ上層部は「誰を連れて行くか」ではなく、多すぎる希望者から誰を選抜して「誰を残して行くか。残る隊員は納得してくれるのか」という次元で悩んでいるのであって、問題の中身が違うのだということを正しく認識してほしいのです。


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