ひらやんのブツクサ独り言   ON WEB
 バックナンバー一覧メルマガ登録・解除・変更お問合せ 2004/1/21配信

何を今さら……

 1月13日に行なわれた民主党の党大会で菅代表は、PKOに参加するための「国連待機部隊」創設を提唱しました。この案は十数年前にPKO協力法をめぐる論議の中でも浮上し、実現性なしとして退けられているのです。

 なぜ「自衛隊ではダメ」で「国連待機部隊ならOK」なのでしょうか。両者の機能にどれほどの違いがあると認識しているのか、菅代表の頭の中を輪切りにして覗いてみたい衝動にかられました。

 PKO部隊を自衛隊で行なう理由は、大きく分けてふたつあります。

 第一は、組織が自己完結していること。つまり、食べること(糧食)、寝ること(宿営)、着ること(補給)、運ぶこと(輸送)、医療(衛生)など部隊を運用することと生活を営むために必要な機能と設備をすべて自前で賄える組織は、日本では自衛隊だけなのです。自衛隊には結婚式場と葬儀屋を除く、全ての機能が備わっていると言っても過言ではありません。警察も消防も海上保安庁も、生活面での機能に関しては全てを自前で賄うことはできません。

 第二の理由は、自衛隊が戦闘集団であることです。かつてのカンボジアも今回のイラクも戦争が行なわれていた地域であり、現在も襲撃される危険があります。「派遣するのは非戦闘地域である」などと、どんな奇麗事を言ってみてもそれが現実です。ですから襲撃を受けたときには、最低限度の自衛のための戦闘を行なわねばなりません。そのための装備があって訓練の出来上がっている組織は、やはり自衛隊だけです。消防は武器を装備していないので論外ですし、警察には拳銃とライフルに加えて、最近ようやく短機関銃が装備されましたが、警察官は戦闘訓練を受けていません。SATでさえ制圧部隊であって、戦闘部隊ではないのです。海上保安庁の巡視船にはバルカン砲が装備されていても、個人には89式小銃と拳銃だけ。当然に陸上での戦闘を行ない得る訓練はやっていません。

 もし国連待機部隊を実際に作るとして、何が必要になるでしょうか。

 まず組織を人的に構成する隊員を募集しなければなりません。これについては、不景気で職にあぶれている若者が殺到するかもしれません。

 つぎに装備です。宿舎、訓練施設、それらを設置する場所、車輌、服装、事務用品、食堂や炊事など生活のための設備、秩序ある組織を維持するための規則、訓練を行なうための教官要員も必要ですね。そして何よりも、莫大なカネが要ります。実際に派遣に耐えるレベルまでなるには、どれくらいの期間を訓練に充てれば良いでしょうか。派遣先で襲撃された場合に備えて、武器も必要でしょう。それに伴う戦闘訓練も。

 これらの条件をすべて満足させたとき、出来上がった部隊は自衛隊と変わらないのではないでしょうか。「自衛隊予備隊」みたいな中途半端な組織をわざわざ作るより、既存の自衛隊を活用するほうが効率が良いということになります。

 菅代表のみならず、PKOに自衛隊を活用することに反対する個人や団体からは、明確な対案もなく「自衛隊だからダメ」という感情論しか見えてきません。

「自衛隊を派遣するのは反対だから、自分たちで有志を募って現地へ行ってやる。だから予算をつけてくれ」

 これだけのことを言える覚悟があるならば、その人たちを応援することにやぶさかではないのですがね。



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