ひらやんのブツクサ独り言   ON WEB
 バックナンバー一覧メルマガ登録・解除・変更お問合せ 2004/3/24配信

防衛論争

 自衛隊に対して肯定的ではない考え方を持っている人がいます。現に存在しているものは仕方ないけれど、決して肯定はしないという人。自衛隊の存在そのものを許すことができず、公然と解散論を唱える人。皆それぞれに態度はさまざまです。

 昨年の一時、故あって私の元へ身を寄せていたデザイナーがいました。ちなみに女性でした。もっとも恋愛感情なんか毛の先ほどもありませんでしたので、全くの「タダの同居人」でした。

 彼女が郷里へ戻るという前の晩、唐突にこう尋ねてきました。
「なぜ、予備自衛官をやっているのですか?」

 私は即応予備自衛官なのですが、一般の人にそんな些細な誤りを指摘しても意味がありません。聞き流すことにしました。
 
 なぜ即応予備自衛官を――?

 考えてみれば根本的すぎる疑問です。私には当り前のことでも、彼女には大きな疑問だったのです。

「自衛隊が好きなんだよね」

 私の答えに対して、彼女はこう言いました。
「OBの人だから、わりあいに年輩の人が多いですよね。常備の若い人より体力も落ちるだろうし、本当に役に立つのかな?」

 たしかに即自の平均年齢は低くはないけれど、年齢層をみれば20代から50代まで。常備の部隊と大差ない構成です。しかし彼女はこうも言いました。

「いざというとき役に立つかどうか分からないんだから、常備の人をもっと増やせばいいのに」

 これは政治の問題ですから、私が勝手に回答できることではありません。しかし予備役制度はどこの国の軍隊にもありますから、予備兵力を整備しておくのは世界的な常識として捉えなければなりません。

 さらに私はこのようにも言いました。
「役に立つことがあってはならないんだよ。オレの夢は、実戦を経験せずに定年を迎えることだ」

 すると彼女は嘲笑を交えてこう言ったのでした。
「だったら初めから自衛隊になんか入らなければいいのに。税金の無駄よ。その分、経済にまわしたほうがいいわ」

 自衛隊を否定的に捉える人は、たいていこう言います。でも考えてみてください。経済も防衛も、国家にはそれぞれに必要です。たとえばお腹の贅肉が無駄だといって、少し削って頭の足りないところへ詰めておこうなんてことはできませんよね。同じように経済も防衛も、互いに融通しあえる性質の予算ではないのです。
 強力な防衛力をもつことは、それ自体が抑止力になります。強い相手にケンカを売ろうとは思わないでしょう。

「誰かがやらねばならんことだよ」
 このように説明しても、まだ納得できない様子でした。

「日本がどこかの国に攻められることって、あるのかしら?」
「無いとは言えない。もし攻められて防衛力が無かったら、日本という国がなくなってしまうんだよ。そうなったら、今みたいな自由な生活はできなくなるよ」
「そうなったらなったで、おエラ方がなんとかしてくれるんじゃないですか?」
 彼女の言う「おエラ方」とは、たぶん政治家のことでしょう。

「国がなくなってるのに、おエラ方なんかいるわけないじゃないか」

 ここまで言うと彼女は返す言葉を失い、答えに窮したようでした。侵略されることの本当の意味が分かっていない人は、ここまで他力本願な世界観しかもっていないとしたら、しかもそれが世間一般の若者の感覚だとしたら、自衛隊が死力を尽くして戦っている間にも、彼ら彼女らはクラブやカラオケボックスで浮かれているかも知れません。そう考えると腹が立ってきましたが、彼女1人に怒りをぶつけたところで若者層の意識を変えさせることはできません。願わくばもっと社会経験を積んで、日本人の一員であるという意識を自覚してほしいと祈るのみです。
 
 なぜ即応予備自衛官を――?

 あまりにも根本的すぎる疑問に対して「自衛隊が好きだから」と、曖昧な回答しか出せなかったことを反省して、その後ひとりで考えてみました。

 左向きの人たちからどんなに非難されようが否定されようが、この国が独立国家である以上、防衛力を整備するのは国民に対する責任であり義務です。誰かがやらねばならないことであり、しかも自分にその機会が与えられているならば、何も躊躇する理由はありません。

 それから予備自衛官・即応予備自衛官というのは、究極のボランティアであると思っています。
 ボランティアとは本来「義勇兵」という意味です。決して賞賛されることのない、いや本来なら賞賛されることがあってはならない仕事ですが、国家にとっては絶対に必要な存在です。表に出ることなく縁の下の力持ちに徹し、愚直に訓練を積んでいる自衛隊を賞賛してほしいとは言わないけれど、感情論でもって否定するような態度は許せないと思うのです。


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