ひらやんのブツクサ独り言   ON WEB
 バックナンバー一覧メルマガ登録・解除・変更お問合せ 2004/5/12配信
非武装中立?

 憲法改正論議がまた盛んになりつつあるようです。5月3日の読売新聞には、読売新聞社独自の改正案まで掲載されていました。また一方で、非武装中立論を未だに引きずっている方々もいるようです。

 戦力を保持せず、どこの国とも同盟関係を結ばないで、完全に中立の立場を維持するという理想が間違っているとは思いません。間違ってはいないけれど、正しいとも思いません。
 非武装中立論者がこれを正しいと主張する理由の一例を挙げると、おおむね次のようなことに集約されるようです。

1.四方を海に囲まれている日本は、自ら紛争の原因を作らない限り他国から侵攻されることはない。
2.このことは歴史的にも明らかで、日本の場合はほとんど自ら他国を侵略して戦争が始まっている。
3.現在でも米軍に基地を提供している安保条約の存在を除けば、他国の侵略を招く要因は何もない。

 おなかを抱えて笑うのはもう少し待っていただきましょう。
 非武装中立は確かに素晴らしい理想ですが、それを唱える論者たちが「現状」や「国際関係」にそぐわない主張を変えようとしない背景には、軍事的観点から見た国際関係と歴史的事実についての知識の欠如があります。航空機は当然になく船さえも帆船しかなかった鎌倉時代に、海を越えてわが国を二度にわたって侵略しようとした国があったことを、彼の論客たちには史実として認識されていないのでしょうか。

 戦後教育を受けた多くの日本人が経験しているはずですが、教育現場では軍事をあたかも「汚らわしいもの」として、故意に教えない傾向があります。その弊害として「戦争になったら誰を殺しますか?」というバカな質問をする若者が発生するわけで、非武装中立論を崇高な理想として崇めてしまう者も出てくるのでしょう。

 良心的軍事拒否国家というものが、実際この地球上に存在するでしょうか。
非武装中立論者がよく引き合いに出すのは、北米大陸と南米大陸の中間に位置するコスタリカ共和国です。
 コスタリカは建前上、軍隊を持っていないことになっていて「非武装永世中立国」といわれています。だから武装した国家機関が存在しないのかといえば、決してそうではありません。小火器で武装した市民警備隊と地方警備隊あわせて約8000人の兵力を持っており、市民警備隊の中には約400名の海兵隊があります。軍事予算は約7800万ドルですから、日本円に換算して約100億円ぐらいでしょうか。
 たった8000人の警備隊ぐらい軍隊の内に入らないと反論するのは、軍事音痴を自ら告白しているようなものです。仮にコスタリカの人口が日本と同じ規模だとすると、人口に占める兵力は24万人という計算になります。お分かりでしょうか。陸海空自衛隊あわせて24万人ですから、コスタリカが持っている兵力は、人口比からいえば日本とほぼ同じなのです。国が小さいから軍隊の規模も小さいだけの話で、人口と国民総生産に見合った兵力を保有しているのです。
しかもコスタリカは国連と米州機構(OAS)にも所属しており、アメリカの軍事力をちゃっかり活用しています。

 前述したように、非武装中立論が間違っているとは思いません。これを本当に現実のものとしたいならば、防衛費の削減や外交政策のあり方などを現実的に議論したうえで具体的な形を作らねばならないし、戦力を持たないで国家の安全保障をどう実現させるのか実現可能で実効性のある対案を示す必要があります。そして軍事大国に対しても毅然と「NO」を言えるだけの精神的な強さも求められるのです。


前の独り言次の独り言
トップメルマガ登録

Copyright (C)  2000-2004 OGK All Rights Reserved

軍事情報メルマガある通信兵のおはなしひらやんのブツクサ独り言「日本列島波高し」〜元幹部自衛官のコラム軍事関連知識集年代表情報資料メルマガバックナンバー硫黄島戦不肖・宮嶋支援HPおすすめ書籍めろんぶっくす心と体の危機管理