ひらやんのブツクサ独り言   ON WEB
 バックナンバー一覧メルマガ登録・解除・変更お問合せ 2004/5/19配信
ジュネーブ条約は絵に描いた餅か?

 戦争になったら誰を殺しますか?
 かつてこんな質問をしてきたのは、高校を出て大分県から上京した新入社員でした。私を元自衛官だと知って、興味津々訊いてきたのです。
 日教組による戦後平和教育の誤りが、この彼の一言に集約されていると思うのですが、それはさておき彼は「戦争になれば人を殺しても罪に問われなくなるから、日ごろから気に食わない奴を殺すんだ」と言いました。戦争をするにもルールがあることなど、全く知らないようでした。
 戦争法規とか戦時国際法と呼ばれているジュネーブ条約は、その大前提として「戦争は犯罪である」としながらも、戦争をするにあたって様々なルールを定めています。ちなみに日本は1953年に批准しています。参考までに申しますと、半島の北にある国はこの条約には批准していません。

 イラク戦争で米軍が捕らえたイラク人捕虜に対する虐待が大問題になっています。「かつての日本軍はもっと酷いことをやった」と、なぜか米軍を擁護するかのように旧日本軍の悪口にすりかえる輩まで現れています。
 ジュネーブ条約では、捕らえた捕虜の扱いについて大変こまかく規定しています。以下、その抜粋です。
○捕虜になれるのは、紛争当事国の軍隊の構成員及びその軍隊の一部をなす民兵隊又は義勇隊の構成員。
○捕虜は常に人道的に待遇しなければならない。
○捕虜は、常に保護しなければならず、特に、暴行又は脅迫並びに侮辱及び公衆の好奇心から保護しなければならない。
○捕虜に対する報復措置は、禁止する。
○捕虜を抑留する国は、無償で、捕虜を給養し、及びその健康状態に必要な医療を提供しなければならない。
○捕虜からいかなる種類の情報を得るためにも、これに肉体的又は精神的拷問その他の強制を加えてはならない。
○女子の捕虜が男子の捕虜とともに宿泊する収容所においては、女子のために分離した寝室を設けなければならない。
○捕虜に対しては、飲料水を充分に供給しなければならない。喫煙は、許さなければならない。
○捕虜に対しては、宗教的儀式を行う適当な場所を提供しなければならない。
○捕虜は、抑留国の軍隊の構成員にとっても屈辱的であると認められる労働には使用してはならない。機雷、地雷その他これらに類する機器の除去は、危険な労働と認める。
○抑留国は、すべての捕虜に対し、毎月俸給を前払しなければならない。
○捕虜に支給される俸給の前払は、捕虜が属する国に代ってされる前払と認める。(中略)当該国が行ったすべての支払は、敵対行為の終了の際、関係国の間の取極の対象としなければならない。

 以上、要するに「人間として良識をもって常識的かつ良心的に保護しなさい」という意味に解釈できます。これに違反したものは戦争犯罪人として軍事法廷で裁かれます。かつて旧日本軍の将兵が数多く戦犯として裁かれ(中には報復的冤罪も多く含まれていました)、処刑され、または服役しました。
 先日来問題になっている米軍によるイラク人捕虜の虐待は、あきらかにジュネーブ条約に違反する行為であり、戦争犯罪人として裁かれるべき事案でありましょう。ちなみに戦争犯罪人に対する刑罰は、すべてこれを死刑に処することができ、死刑より軽い刑罰に処することも差し支えないとされています。
 米国の信用を失墜させる行為を実際に行なった兵士、その上官、さらには司令部組織にまで責任が及ぶかもしれません。さて、どんな処罰が為されるのか、今後の成り行きに注目して行きましょう。

 余談ながら、重要なことだと思いましたので、この場に一言書かせていただきます。
 この原稿の執筆時において、バレーボールのアテネオリンピック出場を賭けた最終予選が行なわれています。試合の模様はフジテレビとTBSが持ち回りで中継しているのですが、試合前に吹奏される国歌に対する態度が拙劣すぎると思うのは私だけでしょうか。
 観客席は全員起立、国旗に正対して敬意を表しています。ところが実況担当のアナウンサーはここぞとばかり、それぞれのチームについて事前に取材した情報を喋り続けています。国歌が流されている時間は決して空き時間などではなく、まさしく「国歌と国旗に対して敬意を表する」時間であるはず。その間は沈黙していても放送事故とは看做されないはずですから、アナウンサーはもっと厳粛な態度で国歌と国旗に対してほしいと思います。


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