ひらやんのブツクサ独り言   ON WEB
 バックナンバー一覧メルマガ登録・解除・変更お問合せ 2004/7/21配信
脱落防止

 野外で武器を使う訓練に出かける前、私たちは武器と装具に脱落防止を施します。何のことかというと、水筒や弾のう、救急品袋、銃剣などは弾帯に装着するようになっているのですが、木の枝にひっかけたり激しい動きをすると外れて落としてしまうことがあるのです。それを防ぐためにガムテープや細いヒモで縛り上げて、激しく動いても落ちないようにするのです。

 銃も同様に、部品を落とさないように要所要所をガムテープで巻きます。たとえば銃剣止めのネジ、銃身の上下を覆っている被筒、その他にも差し込んであるだけの小さなピンとか、ボルト、ネジの類はすべてガムテープで巻いてしまいます。銃の部品は小さいのでもし広大な演習場で落としてしまうと、探すのが大変です。撃ち殻の薬きょうは最後の手段として「紛失」にしてしまえますが、銃の部品はそういうわけには行きません。なくなっていることが分かった時点で訓練を中止して、全員で捜索します。それこそ草の根を掻き分けて、見つかるまで永遠に探し続けるのです。

 ですから訓練中も少し区切りがついたときには、必ず自分の装具と銃を手で触り目で見て確認します。こうして常に点検するクセをつけておくことで、もし紛失しても「○○地点で確認したときはあったから、△△地点までの間でなくした」ということが分かります。そうすれば探す範囲を限定できるので、捜索にかける手間と労力が大幅に軽くでき、発見率も高くなるというわけです。

 しかし、よくよく考えてみれば、戦場で使用することを前提に作られているはずの銃と装具を「落とさないために」という理由でヒモとガムテープで縛り上げるという作業そのものが、じつは本末転倒ではないかと思うわけです。本来なら、どんなに激しく使用する環境でも耐えなければ戦闘には使えないでしょう。装具はひと昔前のものと比べると着脱が簡単になっていて、それだけに外れやすく脱落しやすいという欠点は仕方の無いことかもしれません。しかし銃は、やはり何の心配もしなくて済むようにしてほしいものです。

 私がまだ新隊員教育の前期課程で教育を受けていた頃に、演習場で銃の部品を落とした奴がいました。しかも銃の中では最も小さい、長さ数ミリメートルというピンで、草も何も無い教場の床に落としてもなかなか見つけにくいシロモノです。それを夏場の、雑草が生い茂っている中へ落としたのですから、落とした本人は顔面蒼白、教官と助教は頭を抱えてしまいました。
「とにかく探せ」

 区隊の全員35名で一斉に探し始めましたが、手で草の根を分けるとかえって部品が紛れてしまう恐れがあるので、みんな慎重に目を凝らして草の根っこやら花ビラの間まで掻き分けて探しました。この世から消滅したのではないのですから、どこかにあるはずなのですが、いかんせん数ミリという大きさです。
見つかるはずが無いのです。しかし奇跡は起こるもので、1人の助教がたまたま自分のつま先に落ちているのを発見したのです。この捜索で訓練を半日棒に振りました。

 部品が脱落しやすい構造にも問題がないとは言えないので、落とした本人を責める奴は誰一人いませんでした。

 ちなみに今は、訓練のたびにヒモやガムテープで縛り上げるのが面倒だというので、なるべく使いまわしができてできるだけワンタッチで装具にセットできるものを各自で工夫しているようです。ちなみに私は、小さなフックをヒモにいくつも取り付けて、それぞれの装具をひっかけるだけで脱落防止の役目を果たすように考えました。そしてヒモの両端だけを弾帯に固定すれば、取り外しも楽になるというわけです。


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