ひらやんのブツクサ独り言   ON WEB
 バックナンバー一覧メルマガ登録・解除・変更お問合せ 2004/9/1配信
員数をつける

 員数(いんずう)――という言葉があります。聞いてすぐ意味が分かるのは旧軍の経験者か、現職・元職の自衛官ぐらいでしょう。昔から引き継がれている軍隊用語で、物の定数とか個数、あるいは数量などを意味します。たとえば員数点検といえば、決められた数や数量が揃っているかを点検することをいいます。

 こんな本来の意味とは別に「盗む」という意味で使われることもあります。
自衛隊では年に最低1回は、個人装具の員数点検が行なわれます。点検して回るのは、中隊の物品管理を一手に握っている補給陸曹です。各自、自分のベッドの上に制服・作業服をはじめ、背のう、水筒、鉄帽など個人に貸与されている装具をあらかじめ示された順に並べて点検を受けます。

 補給陸曹の手元には、誰に・いつ・何を・どれだけ貸与したかというリストがあって、決してごまかすことはできなくなっています。
「お前、半長靴が1足しかないじゃないか。もう1足はどうした?」

 半長靴が1足なくなるというのは、ただ事ではありません。
「ゆうべはあったのですが、夜中のうちに員数つけられたみたいです」
 員数をつけられた――つまり、盗まれたということです。おそらく同じ日に点検を受けるほかの誰かが自分の半長靴が1足しかないので、夜中のうちにこっそり盗んでいったに違いありません。しかし自衛隊ではなぜか、盗んだ犯人より盗まれたほうが悪いことになります。
「バカヤロー! 員数つけられたらつけ返せ。員数の無いまま点検受ける奴があるか!」
 結局、探してもどうせ見つからないので、泣く泣く自腹を切って、もう1足買う羽目になります。

 同じような使い方で、たとえば戦車の修理用部品がすぐに手に入らないとき、一時的に他の戦車から部品を外して間に合わせるときに「1号車から員数つけてきた」などと言ったりします。後日、請求した部品が届いたら、ちゃんと元に戻しておくのは言うまでもありません。

 他にも「員数を合わせておけ」と言われたら、数を揃えておけ、あるいは定数が揃っているか確認しておけという意味で、「員数つけておけ」と言われたら、調達(暗に正規の方法によらない意味も含む)して来いとか準備しておけという意味になります。

 員数外というのは、定数に入っていないという意味で、転じて「いらないもの」という意味にもなります。ときとして個人装具を実費購入したわけではないのに、数を余分に持っている者がいます。そういう場合に「これは員数外だ」などと言い、自衛隊生活が長くなるといつの間にか員数外の物品が増えるから不思議です。人間に対して言うときには「戦力外」つまり「いてもいなくても、どっちでもいい」という意味にもなります。俗に言う窓際族やリストラ組は、会社の中で員数外ということなのでしょうか。

 職場でも家庭でも員数外と言われないように、世のお父さん方にはがんばってほしいものですね。


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