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 バックナンバー一覧メルマガ登録・解除・変更お問合せ 2004/10/20配信
予備補に負けちゃいられない

 自衛隊の予備役制度は3種類あります。自衛隊の発足当時からある予備自衛官は最も人数が多く、陸海空あわせて約4万5千人といわれています。年間20日以内の訓練召集が義務付けられていて、有事の際には軽普通科連隊を編成して後方の警備と輸送に就くことになっています。ただし平時にはどこの部隊にも所属していません。

 即応予備自衛官は平成10年度から発足した制度で、予備自衛官より即応性が高く、そして有事の際には前線に投入されることを前提に年間30日の訓練が行なわれます。平時から所属する部隊と自分の補職が決まっており、召集されるとすぐに部隊として行動できます。ただし平時には、訓練以外で部隊との従属関係はありません。

 予備自衛官も即応予備自衛官も、その供給源は元自衛官に限られています。
しかし近年、防衛基盤をさらに拡充・育成し、将来的に予備戦力の安定的に確保する必要が生じてきました。これらの目的を達するために平成14年度から発足したのが一般公募の予備自衛官、つまり「予備自衛官補」の制度です。通称「予備補」と呼ばれ、自衛隊に勤務した経験が無くても一定期間の訓練を修了すれば予備自衛官に任用されます。

 予備補の採用枠には「一般」と「技能」があって、一般で採用されると予備自衛官に任用されるときに「予備2等陸士」の階級が指定されます。一方「技能」で採用されて予備自衛官に任用されるときは、その人が習得している技能の種類とレベルによって、指定される階級が異なります。技能採用された医師が、まったく自衛隊の経験がないにもかかわらず、予備とはいえ2等陸佐(中佐)の階級を指定された例もあります。

 予備補に志願する人の年齢は18歳〜34歳未満と幅広く、志願の動機もじつにさまざまです。若い人の中には、現職の自衛官採用試験を受ける前の「予習」のつもりで予備補を受験する例も少なくないようです。30歳前後の年齢が比較的高めの人は、かつて自衛官を志したものの周囲の反対に遭って断念したとか、具体的に社会貢献できる場を求めたとか、志願の理由は千差万別です。

 予備補の制度が発足する前には「軍事オタクや右翼まがいの輩が大挙して押し寄せてくるのでは?」と心配されていましたが、心配するまでもなくそういう手合いは本気で自衛隊の規律と訓練に耐える根性がないので、心配は杞憂に終ったといいます。

 予備補になった人の何人かに取材してみると、自分が自衛官として銃を手にして戦場に行くかもしれないという実感はあまり持っていないようです。しかしながら自衛隊は武装集団であり、災害派遣ばかりが目立つものの実際には戦うための組織であることはよく認識されています。
「ホンモノの銃を手にしたとき初めて、自衛隊の一員になったことの意味を実感した」という人もいれば、「自分に技量さえあれば、コレ(銃)で人間の生命を奪うことができるという現実に身震いした」という人もいます。だからといって自衛隊の存在意義や訓練に嫌悪感を抱くことは決してなく、むしろいっそう真剣に訓練に励んでいるようです。

 最近になって、予備補を対象に「即応予備自衛官に志願できるようになったら志願したいですか?」というアンケートが行なわれたと聞きました。今すぐ志願する・しないということではなく、各自の意識調査という意味合いで行なわれたものと思われます。

 即応予備自衛官の供給源は予備自衛官と元自衛官に限られていて、すでに質的にも数的にも限界に近い状態になっています。ぶっちゃけて言えば「これ以上は、予備自衛官から転向させるのはムリ」ということです。予備自衛官の要員も必要なのに、即応予備自衛官になる要員をそこから捻出すること自体に無理が出てきたようです。そこで自ら望んで予備自衛官を志して士気も高い予備自衛官補の中に即応予備自衛官になりたいという希望が多ければ、予備補にも門戸を開こうという動きが少しずつ見えてきました。

 近い将来に予備補から即応予備自衛官への登用が実現すれば、自衛隊生活を経験したことのない実戦要員が生れることになります。初めのうちこそ元自衛官から採用された即応予備自衛官とのレベルの差は歴然としているでしょうが、訓練を重ねるにつれていろんなことを吸収し、いつのまにか知識と技量において元自衛官を上回っていたなんてことが起こり得るかもしれません。良い意味での競争が始まれば、日本の予備役制度も真に戦力化していくことでしょう。


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