ひらやんのブツクサ独り言   ON WEB

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 バックナンバー一覧メルマガ登録・解除・変更お問合せ 2004/11/3配信
美談なんかいらない

 新潟県中越地震で被害に遭われた方々へ、心よりお見舞い申し上げます。

 地震発生直後、テレビ各局は予定の番組を中断して特別報道体制をとりました。災害発生時には情報がなにより重要になります。どこでどんな状態になっていて、何をしなければならないかを判断するためには、まず新しくて正しい情報が不可欠です。そういう観点から各局一斉に報道体制を敷いたのは、ごく当たり前の対応だったといえます。

 ところが、地震の発生から1日経ち2日経つうちに、被災地には報道陣とは別にワイドショーのクルーが入り始めます。そして何をするかと思えば、言うまでもありません。「ネタさがし」です。被害の惨状をよりセンセーショナルに演出するために、より悲惨な状況、より不幸な人を探して、そこで懸命に生きようとする人の姿を美談に仕立て上げるわけです。

 阪神大震災のときは、聴覚に障害のある両親をもつ小学6年生の女の子が毎朝、水汲みをしてから学校へ通っているという話にワイドショーが飛びつきました。新潟では年老いた母親をかばうようにして柱の下敷きになり、母親とともに亡くなった息子の話がありました。あれから10年、マスコミは何ら成長していないように見えます。がけ崩れに巻き込まれた母子3人の救出活動を、NHKも含めてテレビ各局は延々と流し続けていました。たしかに3人の安否は気になりますが、数時間ものあいだ映像を流し続ける必要があったでしょうか。

要は救出の瞬間を電波に乗せたい、そのためだけの中継だったのです。

 一方で、地震発生当日に小泉首相が東京国際映画祭に出席していたことを批判する声もあがりました。小泉首相は「内閣総理大臣という仕事をやっている人」であって、予知能力を持った全知万能の救世主ではありません。新潟で大規模な地震が起こることが前もって分かっていれば、映画祭の出席は当然に取りやめたでしょう。しかしただの人間ですから、地震の発生が予知できるはずがありません。批判すること自体に無理があります。

 他にも、点在する避難所に食料や水などの救援物資が行き渡らないことに対する批判もあります。阪神のときと違って新潟は山間部が多く、しかも道路が寸断されていて「行きたくても行けない」という状態に陥っています。自治体には精一杯がんばってもらわねばなりませんが、救援の手を差し伸べる側のヤル気を殺ぐような批判は厳に慎むべきです。ワイドショーのスタジオから理想論ばかり喋っているコメンテーターと称する人たち、自分で行動を起してみましょう。実際に自分で見て体を動かして、それでも同じ理想論を吐けますか。
早朝の情報番組で体制批判ばかり繰り返しているフリーのジャーナリストも然り。

 いま被災地に必要なのは美談でもなければ体制批判でもなく、被災者の立場でものを考え、そして一緒に動いてくれる人です。


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